豊かさを未来へ繋ぐ案内人
相続対策コンサルタント
堀亜砂子です!
相続と確定申告
先日、ある方から聞かれました。
「昨年父が亡くなり、500万円ほど現金を相続したのですが、確定申告は必要ですか?」
結論から言うと、相続で金銭などの財産をもらった場合、
(もらっただけでは)原則として所得税の確定申告は必要ありません。
そもそも所得税というのは、
給与や事業や年金といった「収入」がある場合
その収入から経費相当額を引いた金額である
「所得」に対してかかる税金です。
これに対して、相続や遺贈、贈与などで財産を取得、
すなわち無償(ただ)でもらった場合には、
相続税又は贈与税が課されることになります。
相続で確定申告が必要になる場合
このように、相続で財産をもらっただけでは
所得税の確定申告は不要ですが、
下記のような場合には所得税の確定申告が必要となることがあります。
1.相続した財産を売却した場合
2.相続した財産から得る収入がある場合
3.未支給年金を受け取った場合
4. 死亡保険金を受け取った場合
5.相続財産を寄附した場合
1.相続した財産を売却した場合
相続した土地や建物、株式等を売却して利益が出たときは、
その利益(譲渡所得)に対して所得税がかかるので、
確定申告をする必要があります。
譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を引いて計算しますが、
相続により取得した財産の場合、
亡くなった人(被相続人)がもともと取得したときの取得費を
引き継ぐこととされているので注意が必要です。
かなり昔に取得したために書類なども残っておらず
取得費がわからない場合には、
売却代金の5%を取得費として計算することができます。
すなわち売却代金の95%が所得となります。
所有期間が5年を超える不動産を売却した場合、
「長期譲渡所得」として一律20.315%(住民税5%含む)の税率が
適用されますが、この場合の所有期間も
被相続人の取得日から起算されます。
このほか相続財産の譲渡による譲渡所得については、
一定の要件を満たすことで、
相続税額のうち一定額を取得費に加算することができたり
譲渡所得の金額から一定金額を控除することができるなどの特例があります。
2.相続した財産から得る収入がある場合
賃貸不動産を相続した場合など、
賃料収入は所得税の課税対象となるため、
相続人が確定申告する必要があります。
ここで被相続人が生前不動産所得の青色申告をしていたとしても、
それが自動的に相続人に引き継がれることにはならず、
相続人はあらためて一定の期間内に青色申告承認申請書を提出しなければなりません。
3.未支給年金を受け取った場合
被相続人が受給権を有していた年金のうち、
死亡時に未支給であったものは、
請求に基づき一定の範囲の遺族に対して支給されます。
これを「未支給年金」といい、相続税の課税対象からは除かれますが、
支給を受けた遺族の一時所得として課税の対象とされます。
ただし、一時所得には50万円の特別控除があるため、
未支給年金を含めたその年の一時所得が50万円以下であれば
確定申告は必要ありません。
4.死亡保険金を受け取った場合
保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合において、
保険料支払者が保険金受取人であるときは、
保険金の受け取り方法により、
保険金受取人の一時所得(一時金受取の場合)
又は雑所得(年金受取の場合)として確定申告が必要となります。
6.相続財産を寄附した場合
相続した財産を、特定の対象先
(例:国、地方公共団体、日本赤十字社、公益財団法人など)に寄附した場合は、
一定の手続により相続税が非課税となります。
さらに、一定の要件を満たせば、
その相続人等は確定申告をすることで寄附金控除を受けることができます。
まとめ
相続により財産を取得した場合、
原則として(所得税の)確定申告は必要ありませんが
相続人等がその財産を処分したり
その財産から生ずる収入を得たりした場合には
確定申告が必要となります。
一定の要件を満たすことで適用が可能となる優遇措置などもあるため
税理士などの専門家にご相談されることをおすすめいたします。