想いと豊かさを未来へ繋ぐ案内人
相続対策コンサルタント
堀亜砂子です!
相続や認知症対策のご相談では、預金や不動産、遺言の話になることが多くあります。
一方で、意外と見落とされがちなのが生命保険です。
加入しているだけで安心と思われがちですが、認知症などで判断能力が低下すると、給付金の請求や契約内容の変更、解約などが思うようにできなくなることがあります。
そんなときのために確認しておきたいのが、次の2つの制度です。
✅指定代理請求制度
✅契約者代理人制度(保険契約者代理制度)
名前は似ていますが、目的も役割も異なります。
今回は、相続や認知症対策の視点から、この2つの制度について整理してみたいと思います。
指定代理請求制度とは
指定代理請求制度とは、被保険者本人が認知症や重病などによって意思表示できない場合に、あらかじめ指定された代理人が本人に代わって保険金や給付金を請求できる制度です。
生命保険文化センターのQ&Aでも紹介されている制度で、本人が請求できないときに備える仕組みとして、多くの保険会社で設けられています。(参考:生命保険文化センター「指定代理請求制度とはどのような制度ですか?」)
例えば、次のようなケースが想定されています。
・認知症で請求手続きができない
・脳梗塞などで意思疎通が困難になった
・重度障害により手続きができない
・病名の告知を受けておらず本人が請求できない
代理人が請求できるものや代理人になれる人の概要は以下の通りです。
【代理人が請求できるもの】
・入院給付金
・手術給付金
・がん給付金
・介護保険金
・高度障害保険金
・リビングニーズ特約保険金
【代理人になれる人】
・配偶者
・子
・孫
・父母
・兄弟姉妹
保険会社によっては、内縁配偶者、同居人、実質的に財産管理を行っている人まで認めている場合もあります。
このように、指定代理請求制度は、「保険金や給付金を受け取るための制度」と言えます。
契約者代理人制度とは
一方、契約者代理人制度は、契約者本人が認知症や重病などによって意思表示できなくなった場合に、あらかじめ指定した代理人が契約管理に関する手続きを行える制度です。
主に保険契約そのものの管理を目的とした制度ですが、保険会社や契約形態によっては、契約者と保険金・給付金等の受取人が同一である場合などに限り、契約者代理人が請求手続きを行えるケースもあります。
保険会社によって取扱いは異なりますが、対象となる手続きの概要は以下の通りです。
上記のとおり、保険会社によっては、契約者貸付、払済保険への変更、そして一定の条件のもと、保険金・給付金等の請求などが対象となる場合もあります。
【代理人が行える主な手続き】
・住所変更
・契約内容の照会
・保険料払込方法の変更
・減額
・解約
代理人になれる人については、基本的に指定代理請求制度の場合と同様で、保険会社によっては内縁配偶者や同居人、実質的に財産管理を行っている人などが対象となる場合もあります。
【代理人になれる人】
・配偶者
・子
・孫
・父母
・兄弟姉妹
この制度は、例えば保険契約者が認知症になってしまった場合などで、「契約内容を確認したい」「不要な契約を整理したい」「施設へ入所したので住所変更が必要になった」「保険料引落口座を変更したい」といったときに活用できる可能性があります。
このように、契約者代理人制度は、「保険契約を動かすための制度」と言えます。
なぜ契約者代理人制度が生まれたのか
実は、この2つの制度には歴史的な違いがあります。
指定代理請求制度は、本人が給付金などを請求できなくなった場合への対応として、契約者代理人制度より先に整備されてきた制度です。
一方、契約者代理人制度は比較的新しい制度です。
指定代理請求制度によって、本人が給付金などを請求できない場合への備えは進みましたが、「請求はできても、契約そのものを管理できない」という新たな課題が見えてきました。
保険契約は契約者本人の意思にもとづいて管理されることが原則です。
そのため、家族であっても、本人の同意や権限がなければ契約内容の確認や各種手続きを行えない場合があります。
こうした課題に対応するため、生命保険業界では契約者代理人制度の整備が進められてきました。
なお、保険会社によっては「家族登録制度」を設けている場合もあります。
これは、あらかじめ家族の連絡先などを登録しておくことで、契約者と連絡が取れなくなった場合などに、保険会社から家族へ連絡できるようにする制度です。
ただし、家族登録制度だけで契約内容の変更や保険金請求ができるわけではありません。
成年後見制度を使うほどではないとき
もちろん、成年後見制度を利用すれば対応できる場合もあります。
ただ、成年後見制度を利用するには家庭裁判所への申立てが必要で、手続きに時間もかかります。
また、親族ではなく専門職後見人が選任されることもあり、家族が思っていたように自由に財産管理を進められるわけではありません。
さらに、成年後見は一度開始すると原則として継続するため、住所変更や解約など日常的な保険契約の管理だけのために利用するには、負担が大きいと感じる方も少なくないでしょう。
なお、成年後見制度については現在見直しの議論も進んでいますので、その点についてはあらためて別の記事で整理したいと思います。
こうして「もっと簡便に、あらかじめ決めた家族などがサポートできないか」というニーズの高まりとともに契約者代理人制度が整えられました。
実際に導入している保険会社の例
現在では、多くの生命保険会社で、指定代理請求制度とともに、契約者代理人制度に相当する制度が設けられています。
調べてみると、制度の名称や対象となる契約、代理人になれる人の範囲、代理できる手続きは保険会社によって異なることがわかります。
☑️日本生命
日本生命では、「指定代理請求制度」と「契約者代理制度」が案内されています。
契約者代理人が代理できる手続きとしては、住所変更、解約、減額などが挙げられています。
一方で、契約者変更、受取人変更など契約関係者の変更に関わる手続きは、契約者代理人が自由に行えるものではありません。
☑️明治安田生命
明治安田生命でも、「指定代理請求制度」と「保険契約者代理人特約(契約者手続サポート制度)」が案内されています。
「保険契約者代理特約」を付加することで、契約者手続サポート制度を利用することができます。
代理できる手続きとしては、住所変更、保険金額の減額、解約などが挙げられています。
一方で、契約者変更、受取人変更、保険契約者代理人の変更などは、原則として代理できないとされています。
☑️かんぽ生命
かんぽ生命でも、「指定代理請求制度」と「契約者代理制度」の両方が案内されています。
契約者代理人が代理できる手続きとしては、住所変更、保険金額の減額変更、解約などが挙げられています。
一方で、契約者変更、保険金受取人変更、契約者代理人変更などは代理できない手続きとされています。
☑️ソニー生命
ソニー生命では、「指定代理請求人制度」と「保険契約者代理請求人制度」が案内されています。
保険契約者代理請求人制度は、契約者が契約に関する手続きの意思表示をできない場合に、あらかじめ指定された代理人が対象手続きを行う制度です。
代理できる手続きとしては、保険料負担を減らす手続き、契約情報の変更、資金工面となる手続きなどが中心です。
具体的には、解約、減額、契約者貸付、払済保険への変更、住所変更、保険料払込口座変更などが考えられます。
一方で、契約者変更、保険金等の受取人変更、保険契約者代理請求人の変更などは、対象外とされています。
また、ソニー生命の案内では、契約者や受取人が意思表示できなくなってからでは、保険契約者代理請求人や指定代理請求人を指定できないことが明記されています。
この点はソニー生命に限らず、こうした制度を利用する際に意識しておきたい重要なポイントです。
☑️各社に共通していること
会社ごとに名称や書きぶりは微妙に異なる場合がありますが、共通しているのは、指定代理請求制度と契約者代理人制度は別の制度だということです。
指定代理請求制度は、主に保険金や給付金の請求に備える制度です。
契約者代理人制度は、主に契約管理に備える制度です。
契約者代理人制度で代理できるのは、住所変更、解約、減額、契約者貸付など、契約管理に関する手続きが中心です。
一方で、契約者変更や保険金受取人の変更など、契約の基本的な権利関係を変える手続きは、原則として代理できないものとして整理されています。
※ただし、保険会社や契約形態によっては、契約者と保険金・給付金等の受取人が同一である場合などに、契約者代理人が請求手続きを行えるケースもあります。
つまり、契約者代理人を指定しておけば何でもできる、という制度ではありません。
あくまでも、本人が意思表示できなくなった場合に、保険会社が定める範囲内で、契約管理をサポートするための制度です。
昔の契約だから関係ないとは限らない
契約者代理人制度は比較的新しい制度のため、過去に加入した生命保険だと、契約当時その制度が存在していなかった可能性があります。
しかし、その後保険会社が制度を導入し、既存契約でも利用できるようになったり、後から代理人を指定できたりする場合があります。
「昔の契約だから対象外」とは限らないのです。
保険会社によって、対象商品、利用条件、代理人の範囲、代理できる手続きなども異なりますので、一度確認してみるとよいでしょう。
相続・認知症対策として確認しておきたいこと
ご自身やご家族、大切な方の生命保険契約などについて、次のような点を確認しておくと安心です。
✅加入している保険の内容
✅契約者・被保険者・受取人
✅指定代理請求人の有無
✅契約者代理人の有無
✅家族登録制度の有無
✅現在の契約でも利用できる制度がないか
特に、契約者=親、被保険者=親、という医療保険や介護保険は、認知症になったときに給付金請求や契約管理が滞りやすいため注意が必要です。
まとめ

相続・生前対策というと、遺言書、相続税対策、生前贈与などに目が向きがちですが、認知症などになった後の財産管理という視点では、生命保険もとても重要なテーマです。
私の母は、生前に預金、証券口座や保険の情報をこと細かに整理してくれていました。
おかげで、入院や介護、そして相続の手続きを進める際に大きく助けられました。
どんな制度も、必要になってからでは利用できないことがあります。
生命保険も同じです。
加入しているだけで安心なのではなく、「いざというときに家族が手続きを進められる状態になっているか」
そこまで確認しておくことも、大切な備えのひとつです。
認知症になってからではできないことがあります。
だからこそ、元気なうちに一度確認してみてはいかがでしょうか。
「突然の別れ」は、誰にとっても他人事ではありません。
だからこそ、“その時”が来る前に、できる準備を。
あなたやご家族の大切な想いを、
静かに、でも確かに未来へつなげるために─
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