私が死んだら、このウェブサイトはどうなる?~ネット上に残る「もうひとつの遺品」~

堀亜砂子
堀亜砂子

想いと豊かさを未来へ繋ぐ案内人
相続対策コンサルタント
堀亜砂子です!

先日、「私が死んだら、ChatGPTとの会話はどうなるのだろう?」と題してブログを書きました。

ChatGPTとの会話の中には、仕事についての考えや日々感じたことなど、思っていた以上にたくさんの「私」が残っています。
そこから、自分がこれまで外に向けて発信してきた言葉のことも気になりました。

2024年1月に産声をあげて以来、コツコツ育ててきたこのウェブサイトは、私が死んだあとどうなるのでしょう。
これまで書いてきたブログは、そのまま残るのでしょうか。
そんなことを考えていて、ずいぶん昔のある出来事を思い出しました。

飯島愛さんのブログに書き込まれ続けた言葉

2008年12月、タレントの飯島愛さんが36歳という若さで亡くなりました。
飯島さんはAV女優として活動したのち、テレビのバラエティ番組などで活躍。2000年には、自身の半生を綴った『プラトニック・セックス』を出版しています。

もともと特に大ファンというわけではありませんでしたが、『プラトニック・セックス』は当時購入して読み、
テレビ番組での発言などにも、同年代ということもあって興味を持っていました。
ブログもときどき読んでいたので、亡くなったというニュースには大きな衝撃を受けました。



そして飯島さんが亡くなってしばらく経ったころ、何の気なしに彼女のブログを見に行って驚きました。
亡くなった飯島さんに向かって「寂しいよ」と語りかけるようなコメントが、とてもたくさん書き込まれていたのです。

今回、このウェブサイトのことを考えていて、久しぶりに飯島さんのブログのことが気になったので、あらためて調べてみました。 
飯島さんの公式ブログ「飯島愛のポルノ・ホスピタル」の最後の更新は、2008年12月5日。
その後、飯島さんが亡くなってからもブログはご両親によって管理され、ファンからの書き込みが続きました。

亡くなった直後だけではありません。
何年経っても飯島さんに語りかける人がいて、自分の近況や悩みを書き込む人もいました。
ブログはいつしか、飯島さんを想う人たちにとって「心のよりどころ」のような場所になっていたそうです。
そして2015年、飯島さんの誕生日である10月31日をもってブログは閉鎖されました。

亡くなってから約7年。
最後の記事に寄せられたコメントは、閉鎖時には約7万2,700件に達していました。
閉鎖を決めた理由の一つには、ブログを管理していたご両親が70歳を超え、ご自身たちに何かあったときにファンに迷惑をかけてしまうのではないか、という思いもあったといいます。



亡くなった人が書いた文章は変わらない。
でも、その人がいなくなったあとも誰かがそこを訪れ、語りかけることで、その場所の意味は変わっていく。
飯島さんのブログは、そんな不思議な場所になっていたのかもしれません。

そして今回調べている中で、もう一つ興味深いものを見つけました。
飯島さんのファンの方が作ったブログです。

飯島さんの公式ブログは2015年に閉鎖され、現在は見ることができませんが、そのファンの方のブログには、かつて飯島さんが公式ブログに書いていた記事が残されていました。

本人が亡くなり、ご両親が守ってきた公式ブログも閉鎖された。
それでも、飯島さんが遺した言葉の一部は、別の人の手によって今もインターネット上に残っているのです。

もちろん、他人が書いた文章を転載することについては著作権の問題があります。
残しておきたいという思いがあれば自由にできる、というものではありません。

それでも、飯島さんが亡くなってからこれほどの年月が経った今も、その言葉を残しておきたいと思う人がいることには、考えさせられました。

私が死んでも、ウェブサイトはすぐには消えない

では、私自身のウェブサイトはどうなのでしょう。
調べてみると、FacebookやGoogleなどのサービスとは少し事情が違います。

例えばWordPressで作られたウェブサイトには、「運営者が亡くなったらサイトをこうする」という共通の仕組みがあるわけではありません。

ウェブサイトを維持するためには、サーバーの契約があり、ドメインの契約があり、その上にWordPressを使って記事や画像などのデータが置かれています。

つまり、私が亡くなったからといって、その瞬間にウェブサイトが消えるわけではありません。
サーバーやドメインの契約が維持され、必要な料金が支払われていれば、本人がこの世にいなくなったあとも、生前と同じようにサイトが表示され続けます。

では、誰もその契約のことを知らなかったらどうなるでしょう。

どこの会社と契約しているのか。料金をどのように支払っているのか。管理画面にはどうやって入るのか。

それらを知る人が誰もいないまま料金の支払いが止まり、契約が終了すれば、いずれウェブサイトを見ることができなくなる可能性があります。

一方で、契約している事業者によっては、契約者が亡くなった場合の手続きを定めているところもあります。
たとえば、さくらインターネットでは、契約者が亡くなった場合、相続人が契約を相続したり解約したりするための手続きが用意されています。
相続人以外の第三者に引き継ぐ場合についても、いったん相続人が契約を相続したうえで、サービスを譲渡する方法が案内されています。

もっとも、こうした取扱いはサービス提供会社によって異なります。
「本人が亡くなったら自動的に消える」わけでもなければ、「相続人なら当然に今までどおり運営できる」とも限らないのです。

サイトが残っても、書かれた情報は古くなる

ここで、私にはもう一つ気になることがあります。
仮に私のウェブサイトを誰かが維持してくれたとしても、そのまま残しておけばよいのだろうか?

私のサイトには、相続や税務、認知症対策などについて書いた記事がたくさんあります。
法律も税制も制度もめまぐるしく変わり続けます。

今は正確な情報であっても、10年後、20年後にはまったく違う制度になっているかもしれません。
しかも、そこには「税理士・相続対策コンサルタント」として私が書いた文章が残っています。

書いた本人はもういないのに、検索してたどり着いた人が、何十年も前の記事を現在の制度について書かれたものだと思って読んでしまう。
その情報をもとに判断したり、手続きを進めたりすれば、思わぬ不利益につながることもあり得ます。
そう考えると、特に専門家のウェブサイトは、ただ残せばよいというものでもないと感じます。

一方で、制度が変わっても古くならない文章もあります。

母とのこと。大切な人との別れについて考えたこと。本や映画を通じて感じたこと。
そして、自分自身がどんなことを大切にして生きてきたのか。

そうした文章まで、サーバーやドメインの契約終了とともに、ある日突然すべて消えてしまうのは、なんだか少し寂しい気がします。

書いた人が亡くなっても、文章の権利は残る

そしてもう一つ、忘れてはいけないのが著作権です。
ブログの記事も、一定の創作性があれば著作物として著作権の対象になります。

日本では著作権の保護期間は、原則として著作者の死後70年までとされています。
つまり、私が亡くなったからといって、私が書いた文章が「誰のものでもないもの」になるわけではありません。

著作権には財産権としての側面があり、その権利は相続の対象になります。
ウェブサイトを動かしているサーバーやドメインについては、それぞれの事業者との契約の問題があります。
一方、そこに載っている文章や写真には、著作権など別の権利が関係します。

普段は「自分のウェブサイト」と一つのものとして見ていますが、死後のことを考えてみると、実はいくつもの要素が重なってできていることが分かります。

自分がいなくなったあと、どうしてほしいか

拙著「”なんとなく気になる”が最初の一歩~大切なのは心をつなぐ相続~」でも、SNSなどを含むデジタル遺産について触れています。

利用しているサービスを把握しておくことや、ID・パスワードなどの重要な情報そのものを一覧表に書くのではなく、その保管場所を信頼できる人に伝えておくことなどについても書きました。

でも今回、自分のウェブサイトについて考えてみて、もう一つ気づいたことがあります。
私には、このウェブサイトを引き継いで運営してくれる後継者がいるわけではありません。

「自分がいなくなったあと、このウェブサイトをどうしてほしいのか」を決めておいたとしても、それを誰が実行してくれるのでしょう。
考えてみると、自分の希望を決めておくだけでは足りません。

サーバーやドメインの契約先などを整理するとともに、自分の希望を誰に伝え、実際の手続きを誰に託すのかまで考えておく必要がありそうです。

身近に託せる人がいない場合には、死後事務委任契約によって、亡くなったあとのデジタルサービスの解約やデータの処理などを第三者に託しておくことも考えられます。
ただし、ウェブサイトについて自分の希望をどこまで実現できるのかは、利用しているサービスの契約内容なども含め、個別に確認しておく必要があります。

自分が死んでも残るもの

飯島愛さんのブログは、飯島さんが亡くなったあとも約7年間残りました。

本人から新しい言葉が発信されることはもうありません。
それでもそこには人が集まり、飯島さんに語りかけ、近況を報告し、寂しさをそっと置いていきました。

それを思うと、ウェブサイトというものは、単なる情報の置き場所ではないのだと思います。
そこに書かれた言葉には、その人の考え方や経験、そのとき感じていたことが残ります。

私自身、このウェブサイトを自分が亡くなったあとどうしてほしいのか、まだ答えは出ていません。
母とのことや、大切な人との別れ、本や映画を通じて感じたことなどは、私がいなくなったあとも、どこかに残っていてもいいような気もしています。

全部なくなってしまうのは少し寂しい。
でも、何もかもそのまま残しておきたいわけでもない。

では、何を残して、何を閉じるのか。そして、それを誰に託すのか。
託せる人がいないならどうするのか。今の私には、まだ答えがありません。

ただ、何もしないまま「誰かが何とかしてくれる」と考えるのは違うと思います。
まずは、このウェブサイトに関する契約や管理方法を整理すること。
そして、自分がいなくなったあと、ここにあるものをどうしたいのか、少しずつ考えてみようと思います。

自分が死んだあとに残るものをどうするのか。
それを考えておくことも、これからの時代の「終活」の一つなのだと思います。



【参考サイト】
スポニチアネックス 飯島愛さん公式ブログ閉鎖について
女性自身 飯島愛さんブログ閉鎖についての実父インタビュー
さくらインターネット「契約者が逝去したため相続または解約をしたい」
文化庁「著作権テキスト-令和8年度版-」





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この記事を書いた人

堀 亜砂子

堀 亜砂子

税理士・相続対策コンサルタント
~想いと豊かさを未来へ繋ぐ案内人

税理士歴26年、法人・個人含め13,000件以上の相談対応。
個人事務所、ビッグ4税理士法人、外資系事業会社、国税不服審判所、
資産税系税理士法人を経て2023年独立。

将来を約束した恋人が30代で急死、
その後も尊敬する上司の急逝、実母の他界など、
大切な人が突然この世からいなくなる経験を重ねたことから
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