貸付用不動産の相続税評価、通達案で見えてきたこと ~令和8年度税制改正続報~

堀亜砂子
堀亜砂子

想いと豊かさを未来へ繋ぐ案内人
相続対策コンサルタント
堀亜砂子です!

昨年12月に公表された令和8年度税制改正大綱では、貸付用不動産の相続税評価を見直す方針が示されました。

相続開始前5年以内(贈与の場合は贈与前5年以内)に、有償で取得または新築した一定の貸付用不動産については、原則として、相続や贈与の時点における通常の取引価額に相当する金額で評価するというものです。

大綱では、取得価額を基に地価変動等を考慮して計算した金額の80%相当額とする考え方や、不動産小口化商品についても評価方法を見直す方針が示されていました。この内容については、以前のブログで取り上げています。

そして9月18日、国税庁から「貸付用不動産の評価について」の法令解釈通達案が公表され、意見募集が始まりました。


大綱では分からなかった具体的な計算方法や取扱いも明らかになっています。
まだ案の段階ですが、今回はその主なポイントを見ていきます。

80%相当額はどう計算する?

通達案では、取得価額を基に評価する場合の具体的な計算方法が示されました。

土地等
取得価額 × 地価変動率 × 80%

家屋等
(取得価額 − 償却費等)× 80%



土地の地価変動率は、原則として取得した年と相続等があった年の路線価などを比較して計算します。
建物は、取得価額から取得後の償却費等を差し引いて計算します。

また、取得や新築の時期は、原則として引渡しの時とされています。
つまり、単純に「購入価格の80%で評価する」というわけではありません。

5年以内でも対象にならないケースがある

相続等の前5年以内に取得した貸付用不動産でも、一定の場合には新しい評価方法の対象としない取扱いが示されています。

例えば、収用等に伴って取得した一定の代替資産や、交換・買換えによって取得した一定の資産などです。
また、既存の家屋を増築・改築した場合についても、一定のものは対象外とされています。

いずれも細かな要件がありますが、「5年以内に取得・新築した貸付用不動産はすべて新しい評価方法になる」というわけではないということです。

建築中の賃貸住宅はどうなる?

すでに所有している土地などに賃貸住宅を建てる場合については、経過的な取扱いも設けられています。

一定の土地の上に、通達制定日までに家屋を新築した場合には、新しい評価方法の対象としないこととされ、その時点で建築中のものも含まれます。

今回の通達案では、この「建築中」について、

契約を締結していること
実際に工事が行われていること
費用の全部または一部を支払っていること

という具体的な要件が示されました。
単に建築を予定しているだけでは該当しない、ということになります。

なお、新しい評価方法そのものは、2027年1月1日以後の相続や贈与等から適用される予定です。
経過措置については、この日ではなく「通達制定日」が基準になる点には注意が必要です。

不動産小口化商品も具体化

不動産小口化商品については、取得時期を問わず評価方法を見直すことが大綱ですでに示されていました。

今回の通達案では、その具体的な評価方法も示されています。

原則は、相続や贈与の時点における通常の取引価額に相当する金額で評価しますが、適正な価格情報がある場合には、元本等相当額や精通者意見価格、一定の鑑定評価額などを使った評価も認められます。

元本等相当額を使う場合には、その90%を基にする方法などが示されており、事業開始から5年以内の商品については別の計算方法が設けられています。
大綱の段階では分からなかった、具体的な評価方法が見えてきました。

評価方法だけでなく、その先も

今回の見直しの背景には、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との大きな乖離があります。

この問題については、政府税制調査会で取り上げられた事例や、財産評価基本通達の総則6項をめぐる問題も含め、以前もブログで詳しく取り上げました。

実際の相続では、いつ、いくらで取得した不動産なのか、どのような経緯で取得したのかによって、評価方法が変わる可能性があります。

これからは、取得時の契約書や取得価額が分かる資料などを、これまで以上にきちんと残しておくことも大切になりそうです。
そして、相続対策として不動産を考えるなら、税務上の評価額だけでなく、収益性や維持管理、借入金の返済、将来誰が引き継ぐのかということも大切です。
相続税評価額が低くなることと、家族にとって引き継ぎやすい財産になることは、必ずしも同じではありません。



正式な通達が発遣されたら、今回の案から変更されたところも含めて、また確認していきたいと思います。



【参考資料】
・財務省「令和8年度税制改正の大綱」(2025年12月26日閣議決定)
・国税庁「『貸付用不動産の評価について』の法令解釈通達(案)の概要」(別紙1) 
・国税庁「貸付用不動産の評価について(案)」(別紙2)





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この記事を書いた人

堀 亜砂子

堀 亜砂子

税理士・相続対策コンサルタント
~想いと豊かさを未来へ繋ぐ案内人

税理士歴26年、法人・個人含め13,000件以上の相談対応。
個人事務所、ビッグ4税理士法人、外資系事業会社、国税不服審判所、
資産税系税理士法人を経て2023年独立。

将来を約束した恋人が30代で急死、
その後も尊敬する上司の急逝、実母の他界など、
大切な人が突然この世からいなくなる経験を重ねたことから
生前に想いをしっかり伝え合い
その日のためにできる限りの備えをしておくことの
大切さを多くの人に伝えるべく活動しています。