NHKドラマ『老害の人』が地上波に―役割を手放した、その先

堀亜砂子
堀亜砂子

想いと豊かさを未来へ繋ぐ案内人
相続対策コンサルタント
堀亜砂子です!

10月24日(土)からNHKで、内館牧子さん原作のドラマ『老害の人』の放送が始まりました。


以前、原作をAudibleで聴いて、ブログに書いた作品です。
当時はドラマを観ていませんでしたが、伊東四朗さんをはじめとする配役を知り、あまりにもイメージ通りで嬉しくなったことを覚えています。

2024年のBSドラマが、地上波初放送

『老害の人』は、2024年5月5日から6月2日に、NHK BSなどの「プレミアムドラマ」で放送された全5話の作品です。
今回は、その作品がNHK総合の「土曜ドラマ」で地上波初放送となりました。

原作は、2022年に刊行された故・内館牧子さんの同名小説。


『終わった人』『すぐ死ぬんだから』『今度生まれたら』に続く、高齢者小説の第4弾です。
一方、NHKでは『すぐ死ぬんだから』『今度生まれたら』に続く、「老後」小説のドラマ化第3弾と位置付けられています。

会社を譲っても、手放せないもの

伊東四朗さんが演じる主人公・戸山福太郎は、ボードゲームなどを製作・販売する会社の前社長。
娘婿に社長を譲ったあとも会社に顔を出し、社員をつかまえては、昔の手柄話を繰り返します。


娘を夏川結衣さん、娘婿を勝村政信さんが演じ、近所の高齢者たちも加わって、コロナ禍の家族や地域を巻き込む騒動が展開していきます。


社長の座は譲った。
でも、自分が中心にいた場所から、気持ちまで離れることはできない。
そこには、「自分はまだ必要とされている」と確かめたい思いもあるのかもしれません。


事業承継でも、地位や財産を引き継ぐことと、任せる側の気持ちが切り替わることは、必ずしも同時には進まないものです。この物語には、そうした難しさも重なって見えます。

本音を言えない側にも、限界がある

内館さんは、この作品についてのインタビューで、高齢者の自慢話や昔話には、自分の存在を示そうとする面があると語っていました。


一方、それを繰り返し聞かされる側には、負担がたまっていく。
現実には言いにくい双方の本音を、小説の中でぶつけ合わせる。そんな活劇を書きたかったそうです。


相手が親だから。
年上だから。
寂しいのだろうから。


そう思って聞き続ける側にも、限界はあります。
けれど、思い切って言ったあとには、傷ついた相手の姿を見て、自分のほうが落ち込んでしまうこともある。


相手を大切に思う気持ちと、その言動にうんざりする気持ちは、同時に存在するものなのだと思います。
どちらか一方の言い分だけでは割り切れないところに、この物語の身につまされる面白さがあります。

親の老いに向き合ううちに、自分の老いも見えてくる

番組の公式紹介で、あらためて目に留まったのは、子ども世代の戸惑いでした。


親の言動に振り回され、ストレスを抱える。
その一方で、世間からは、自分自身の終活も早く考えるよう促される。


親を見ているはずが、いつの間にか、自分のこれからも気になってくる。
まだ仕事もあり、日々の暮らしに追われているのに、老後や人生の終わりへの備えまで求められる。
こういった焦りは、自分にとっても遠い話ではなく、正直じわじわと迫ってきているのを感じます。




そしてさらに、孫世代には孫世代の事情や思いがあります。
高齢者と若者という二つの立場に分けても、その中にいる人たちの悩みは同じではない。
それぞれが、自分の人生の途中にいるのです。

「理想の老後」も、押し付けになっていないか

趣味を持って。

新しいことに挑戦して。

自分の時間を楽しんで。

どれも前向きな言葉です。


ただ、それは周囲の考える「こうあってほしい老後」になっていることもある。
この作品の高齢者たちは、若い世代が勧める自分磨きとは違う形で、誰かの役に立とうと動き出します。


好きなことをしていれば、それだけで満たされるとは限らない。
誰かと関わり、必要とされることで得られる喜びもあるのでしょう。


もっとも、「役に立つこと」が、生きている価値の条件になってしまうのも苦しい。
年を重ねた自分が何を望むのかは、そのときにならなければわからない部分もある。
今の自分が考える理想を、誰かに当てはめることには慎重でいたいと思います。

以前の記事から、あらためて考えること

2025年3月に書いたブログでは、「肩書きがなくなること」への不安に触れました。
今は仕事も肩書きもある自分が、それらを失ったときにも、自分自身に自信を持てるのだろうか。


そんな思いで、主人公を見つめていました。
また、物語に登場する突然の別れに、自分の経験が重なったことも書いています。


さらに今年、『迷惑な終活』を聴いたときには、「周囲に迷惑をかけないこと」を優先するあまり、自分の人生を置き去りにしてはいないか、と考えました。


周りへの配慮は大切です。
けれど、それと同じように、いやそれよりも何よりも、自分がどう生きたいかを大切にしたい。
そしてそのうえで、関わる相手の時間や思いも尊重したいと思います。


以前、原作を聴いたときには、肩書きを失った自分を想像しました。


今は、その先のことがリアルに気になります。
仕事や役割が変わったあと、自分は何を楽しみ、誰と、どんなふうに関わっていたいのか。


まだ答えは出ませんが、今の自分にもつながる問いとしてしっかりと受け止めて、引き続きドラマを楽しみたいと思います。







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この記事を書いた人

堀 亜砂子

堀 亜砂子

税理士・相続対策コンサルタント
~想いと豊かさを未来へ繋ぐ案内人

税理士歴26年、法人・個人含め13,000件以上の相談対応。
個人事務所、ビッグ4税理士法人、外資系事業会社、国税不服審判所、
資産税系税理士法人を経て2023年独立。

将来を約束した恋人が30代で急死、
その後も尊敬する上司の急逝、実母の他界など、
大切な人が突然この世からいなくなる経験を重ねたことから
生前に想いをしっかり伝え合い
その日のためにできる限りの備えをしておくことの
大切さを多くの人に伝えるべく活動しています。